24 Oct 2021

雅楽の古譜を読む:桜人

 ”さくらびと”

催馬楽の一曲。名古屋市の指定無形文化財に登録されている。

それがこの動画。一部しか収録されていない。


他の団体による演奏もある。

2倍速再生にしてもたいしておもしろくない。
舞がついているものもある。



最後に僕の読譜によるもの。譜は仁智と三五。歌はNEUTRINOというフリーのシンセサイザーによるもの。歌い手はポップに聞こえるものを選択した。この歌の詩は前半が男性が読んだもの、後半が女性が読んだものとなっているので、それぞれ男声、女声を当てはめた。


同じ古譜を元にしているなら結果はもっと似るものと思う。全く異なる曲に聞こえるというのはどういうことなのか?

僕の音源は古譜に書かれているものをそのまま音にしている。器楽の部分は。歌は器楽の譜に書かれた歌詞から作っている。雅楽ではすべての旋律楽器はユニゾンで演奏するように書かれている。現在でもJazzの歌の譜はピアノの右手がその旋律を弾くように書かれている。

そこで催馬楽もユニゾンの旋律ではないかと仮定して歌の旋律を作っている。フレーズの長さは歌譜を参照している。しかしながら、歌譜と仁智、三五に書かれたフレーズの音を延ばす箇所が異なっていたりする。歌譜と仁智、三五は完全にリンクしているのだろうか?と言う疑問がある。

現代の雅楽は本当に古代に演奏されていたものを再現しているようには思えない。古譜にある音楽とは全く違うから。現代の雅楽の演奏家達はどう考えているのだろうか?宮内庁雅楽部もどう考えているのか?

現代の雅楽は明治に西洋の音楽の基本構造を取り入れて編曲されているもののように聞こえる。古譜には旋律楽器はすべてユニゾンで演奏されているのだが、現代の雅楽はそうではない。皇室ゆかりの古代からの伝統音楽を以って西洋列強に並ぶ日本の威信を示したかったのだろうか?それとも国内の一般人に開放された雅楽(江戸時代までは一般人は学ぶことはできなかった)を荘厳なものとして受け留めさせたかったのか?

どちらにしろ、マインドコントロールしようとしたのだろうし、現在もしているのだろう。日本という国家のやり口にも不誠実なところがある。それが現在の雅楽なのだ。


国会図書館のレファレンスで桜人について調査されていた。

名古屋市指定無形文化財である催馬楽「桜人」について知ることのできる資料はないか。

学者二人が既に他界しているので当事者にインタビューできない。清書した譜は市へ提供された。桜人保存会も譜を持っていて演奏団体へ貸出しているらしい。動画で演奏を聞いた限り明らかに仁智と三五にある譜とは異なるし、編曲されている節もある。

昭和30(1955)に名古屋で桜人譜の発見というのは事実なのか、捏造ではないのか?この曲は名古屋市の指定文化財となっているのだが、その認定の経緯ははっきりしていない。

2022/08/11 羽塚堅子氏の著作桜人考に書かれていた。


国文学研究資料館のDBでは桜人の譜が単独ではひっかっかてこない。名古屋市鶴舞図書館には2017年製作のDVDがある。


ブログに桜人について書かれたのがあった。そのコメントに新たな情報が書かれていた。

横井利明オフィシャルブログ(前名古屋市会議員)

引用

「昭和になって名古屋市で譜面が発見された」というのは事実と違うようです。名古屋市文化財叢書によれば、信州野尻在の平出久雄氏が収蔵されていた源家古譜を元に、小林橘川市長の指示で羽塚堅子氏が復元されました。

また、歌詞の「とまち」は「十町」です。

ここまで


源家の古譜は三五要録(伏931)には載っていない。仁智は藤とも源とも書かれていないのが1曲だけ掲載されている。