30 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:胡蝶 破 急 高麗壱越調

 

E Ionianで演奏させるよう直したもの。急は笛と篳篥が1拍後にズレていることがわかったのでそれを修正した。

子供が蝶々の着ぐるみを着て舞う舞い。番舞は迦陵頻伽で鳥の着ぐるみを着て舞う。

破は最後の繰り返しのみパーカッション付き。急は繰り返し回数の指定がない。

迦陵頻伽はインド伝来と考えられるが、胡蝶は日本で作曲されたものらしい。子供相撲のために作られたとか。

急の笛は4拍子で書かれているが、箏と琵琶は2/4拍子で書かれている。

急の管楽器はテーマから離れ過ぎに聞こえる。

Youtubeで幾つも動画がヒットする。

これは熱田神宮の。7:38位からが本曲。それまでは乱声とか音取りとか。たるいのを吹く決まり。

教訓抄 日本思想体系の脚注には着ぐるみの図が書かれている。


高麗壱越調は箏では平調調弦(E dorian)で弾くと指示があるのだが、これでは琵琶と微妙に合わない。太食調弦(E mixolydian)で弾くと琵琶との合わなさはだいぶん解消される。

琵琶と箏の古譜は其々三五要録と仁智要録で同じ人物が監修したので、これらの譜による演奏はより合うハズと思う。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

29 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:崑崙八仙 高麗壱越調


教訓抄には 三五要略では鶴舞と呼ばれているとあるが、現存する三五要録では崑崙八仙になっている。

先に音源化した都志も鶴舞なので比較できる。


アイヌの踊りに鶴舞があったりする。そして楽器にも和琴がある。雅楽からの影響なのか?

右方楽には単純な旋律を繰り返して演奏するというものが多く見られる。このアイヌの鶴の舞の音楽も単純な短い旋律の繰り返しでできている。こういう構造のものがより古いのだろうか?


楽譜には小拍子が欠落しているとか、拍子が半拍ずれているとか、曲の末尾が足りないとか、問題があったこれらは箏の譜に合わせるように手を入れた。

Youtubeに宮内省楽部の昭和18年の演奏があった。葬式?という感じ。
春日大社で演じられたもので舞いがついているのがあった。

鶴というより小さな孔雀?けだる過ぎるテンポ。ナマケモノの舞い?

音楽を台無しにする遅すぎるテンポ、荘厳に聞かせて権威を示すという実を伴わないハッタリを国家規模でするの止めてほしい。やってはいけないことをやってると思う。

参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

28 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:石川楽


読譜ミスを修正したバージョン。


教訓抄によると 読みはセッセー。

この旋律が歌詞を伴って催馬楽というジャンルで歌われた。

歌詞はこちら ≪巻第十二の催馬楽・つづき≫

このサイトの解説によると高麗から渡来した人が女性の家へ通って一夜を過ごした後に帯を取り間違えて返ってしまった話しらしい。畿内に渡来人が多く住んでいたのは興味深い。石川は大阪府南部にある川なのか。

吉桿という曲には”力無き蛙、骨無きミミズ”の歌詞が付いていた。

石川の旋律についている歌詞は”石川”という語句が入っている。そして”高麗人”も歌い困れているので、右方楽に属する曲であることを踏まえて歌詞が付けられたらしい。

平安時代末期には雅楽の石川の舞いはかろうじて残っていたが、それを伝える者は他者の質問に誠実に答えなかったらしい。現在では廃絶曲になっている。

この曲は箏は弱拍から始まる。笛と琵琶は強迫から始まっている。

曲中で2拍目からフレーズが始まる箇所がある。

笛の譜には初回は低い音域で、2回目以降は高い音域でと指示がある。これは珍しい。

石川姓の宮司の家系がある。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一


雅楽の古譜を読む:都志与呂妓 高麗壱越調


読譜ミスを修正したバージョン。

 教訓抄によると鶴舞、八仙と呼ばれることもあるという。

崑崙八仙というい曲があるがそれと被るのではないか?

崑崙は妓楽の登場人物でもある。それはアフリカ系黒人奴隷を示すこともあった。

この曲想からは崑崙奴と関係があるようには思えない。


篳篥の譜を見つけられなかった。

平安時代末期には既に絶えていたらしい。仏教の法会のために用いられる曲だった。現在は廃絶曲。


リズムセクションは高麗の四拍子を採用。


右方楽はご機嫌な曲が多い様子。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

19 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:蘇莫者 序 破 盤識調

箏の読譜の誤りを修正したバージョン。


新撰笛譜の旋律はシンプルで基本のメロディが分り易いが、六調子や大家龍笛要録譜は装飾が多すぎて話にならない。

これらの装飾過多の旋律が合奏されたとは考えにくい。

合奏には個人の奏者のためにソロパートが設けられていたのではないだろうか?Jazzのコンボみたいにソロを披露する機会があったのではないか?

 序の部分は古くは繰り返して演奏されたが、平安時代末期には繰り返し無しで演奏されたらしい。木管楽器の旋律が装飾過多なので、それらはオミットした。

破の方は木管楽器の装飾過多の旋律をソロパートとして演奏させている。

序は一定の拍子がないだけでテンポは遅くない。破は一定の拍子があるが、テンポは速くない。

この曲は復曲されていてYoutube上でも動画がある。

5:45からが当曲と思う。
雅楽は無駄に前置きが長い。

信西古楽図では蓑を着ていてこんなきれいな格好はしていないのだが。

譜によっては”蘇が莫者を作った”と書いてある。。

越殿楽なら”殿が作った”とか。。

聖徳太子が馬で出かけている時に馬上で尺八で蘇莫者を吹いたら山の神様が化け物の格好をして躍り出てきて舞った。その舞いをコピーしたのが宮中の蘇莫者の舞い。

日本の雅楽は中華帝国の宴会用の舞楽、流行歌なので、楽しんで見聞きできるハズなのだが。

聖徳太子自体が怪しい存在なので後付けのストーリーと思う。

日本は中華帝国に阿毎多利思比古が用明天皇と申告している。聖徳太子は用明の息子。

天照は九州王朝の歴代の王の一人だった。王年代記で中華帝国に渡った情報なのだが、これを保守も左翼も取り上げないのは何故?

参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏587
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十七、十八、二十
  • 新撰笛譜 富山市立図書館 no.3828

15 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:阿夜岐利 高麗壱越調

読譜ミスを修正した改訂版。



面:女形 白 牟子 一説鳥甲

教訓抄p.95によると幾つも呼び名があったらしい。

  • 愛嗜女(御神楽の歌あじめの作法と関係あるか?)
  • 大靺鞨
  • 阿夜岐理
  • 高麗女

舞人が6人で亀甲の形に並んで舞う。拍子18、10。拍子100まで舞う。どのように見ても女姿の舞いである。口伝では音取らずして直接吹く。初二拍子序吹く。拍子打たず。初拍子は次に太鼓を打つ箇所。

常説は心調子を吹き、この曲を吹く。常楽の様に。

この曲には”ソライリ”というものがある。ミナイリナムトスルヨウニテ、又ウチカエリテ舞う。打返舞時、拍子加える。口伝では空入は舞入りて、後頭が舞台の端際まで歩き寄って、我に立ち返って舞う。


曲の冒頭の2小節が序ということなのだろうか?琵琶に小拍子1つ分に多量の音符が詰め込まれている。


伏904の琵琶譜は拍子14となっているが、譜には12しかない。冒頭の2小節を繰り返すというのがしばしば見られるパターンであるが、それを示す譜字はない。

伏808の篳篥譜は冒頭に太鼓の百と小拍子が書かれていない。この部分が序であろうか。百を数えると13あるので冒頭に1つ加えると14。反付の位置は3小節目に返るということと思われる。冒頭の小節は”引”の譜字をフレーズの目安として音符を割り振った。最初の百の前の譜字は不明。


伏872、伏808と伏904は基本の旋律線は合っているように聞こえる。しかしながら笛と篳篥の変奏は大胆。伏904の琵琶から基本旋律を抜き出して見ると仁智要録伏865と似ている旋律で構成されていることがわかった。そこで拍子18の仁智要録から拍子14のバージョンを復元してみた。琵琶譜の冒頭の2小節は繰り返して、1回目は倍遅く演奏し序とした。


パーカッションは高麗の四拍子を採用。


おかめの面はこの阿夜岐利から発展したと思われる。ひょっとこは同じく右方楽の貴徳の鯉口から。能の女面も源流はこれ。能には翁の面もあり、それも源流は右方楽の採桑老と思われる。

獅子舞の口取り、天狗は伎楽の治道。雅楽の左方楽の散手。明治になるまでは雅楽は一般民衆には公開されなかったのだが、影響は受けていた様子。能管が竜笛の見ためにそっくりなのも興味深い。しかし能管は喉があって音程が不安定でまともに吹けない。これは雅楽の楽器を民衆の手に渡さない工夫だったのか?

武士の間で能が流行ったのは雅楽を流出させてはいけなかったからか?

”どのように見ても女姿の舞いである。”そして鳥甲。女が鳥甲被るだろうか?また”どのようにみても”とわざわざ言う意味があるのか?この舞いは女に男装させて舞う舞いではないのか?白拍子に繋がるのか?


参考文献

  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
  • 高麗曲並六調子曲譜 宮内庁書陵部 伏904
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一

12 Nov 2020

作物(造物) 高麗壱越調


読譜ミスを修正した改訂版。



教訓抄には 作物は高麗壱越調、双調、平調にあるらしい。それぞれ作曲者が異なる。

高麗壱越調のこの曲は百済真雄(貞雄)によるもの。姓が百済で曲が右方楽に属するところがおもしろい。


リズムセクションには高麗四拍子を採用した。

三五要録によると「散手」が作物を用いる時「貴徳」はこの曲を急として用いるとある。

教訓抄によると「貴徳」が急を隠す時、この曲を用いるとある。


参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一

10 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:常武楽(常雄楽) 高麗壱越調


 教訓抄によると高麗の退出音声として用いられた。

しかし平安時代末期には高麗の退出音声自体演奏されなくなっていたらしい。高麗の参音声は顔除と黒甲序、この常雄楽の3つのことを指すのだろうか?

懐中譜は拍子12。三五要録は拍子13。これらの旋律は合わないところが多い。

今回は琵琶譜を元に笛のテーマを作った。繰り返し2順目は懐中譜のオリジナル。


高麗曲の方が唐楽よりも古い楽曲の様に感じる。構成が単純で短い。


参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹931
  • 高麗曲譜等 宮内庁書陵部 伏978
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

9 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:進蘇利古 高麗壱越調

 

読譜ミスを修正したバージョン。

Youtubeで見られる蘇利古と同じと思われる。古譜では進蘇利古となっていて、退蘇利古はない。

篳篥の譜を見つけられなかった。

太鼓は高麗の4拍子を採用した。懐中譜は小節線は分かるものの小拍子がないので音価が分かり難かったので箏の旋律に合うように校訂した。

教訓抄によると早楽とある。

幾つか見たがどれも速いテンポに聞こえないのだけど。。。調も短調系に聞こえるし。。

教訓抄が書かれた平安末期には舞いは絶えていたらしい。そして儀式の退場用の曲として用いられていた。

アーフタクトの音価は8分音符なのか?4分音符なのか?アーフタクトはあまり効果を上げていないと思う。


高麗楽は繰り返しを多用していて唐楽より古めかしく感じる。また唐拍子と呼ばれる2/4拍子の曲が高麗楽に多く見られるのも興味深い。この曲は4/4拍子。

三重県北勢地区の獅子舞の曲が2/4拍子なのも興味深い。この獅子舞は田楽系と考えられるが、その田楽は伎楽から発展した様である。伎楽は百済から入ってきたことになっている。


”千と千尋の神隠し”に登場するキャラはこれらしい。

参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹931
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

8 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:敷手(志妓手、志岐伝) 高麗壱越調


読譜ミスを修正した改訂版。




 教訓抄によると舞いがあり、天皇の元服を祝って舞うらしい。

拍子は14だが、しちりき篳篥は12。舞いは拍子が180になるまで舞われる。拍子12でだったら15回繰り返す。

舞人が大輪小輪を作るのが、四天王寺の獅子舞っぽい動きか。青海波に似ると書いてあるが、今の青海波は輪を作っていないのでは。早拍子なのに遅いし。。

舞がついていたらテンポが遅くなるのだろうか? 現代のは恐ろしく遅い。何がおもしろいんだかわからない。

三重県北部の多度雅楽会の演奏。テンポ遅すぎて合わないのではないか?大輪も小輪もないし。舞台セットとか衣装は良くても実力が伴っているとは思えない。こういうハッタリ精神は良くないと思う。


参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 楽家録
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店

6 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:黒甲序(倶倫甲序) 高麗壱越調

 

高麗の参音声の一つ。教訓抄と三五要録では拍子が13であるが、懐中譜と高麗曲等譜では拍子が12のものが掲載されている。

平安時代末期にはすでに演奏されていなかった。代わりに狛鉾が演奏されていた。

笛は基本の旋律に基づいているが、かなり凝った変奏をしている。

リズムセクションは顔除と同様にした。


参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 高麗曲等譜 伏978
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣府 199-0162
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店

雅楽の古譜を読む:顔除 高麗壱越調

三五要録にだけ譜が残っている。

2020 11 05 懐中譜に笛譜があるが、拍子16なので琵琶の拍子18と合わない。旋律線が共通のところを参考に琵琶譜にあうように補填、校訂した。

かつては行事の会場に右方の人が入る時、高麗の参音声として用いられたが、平安時代末期には既に演奏されなかった。この代わりに演奏されていたのが春庭花。新河浦がこの曲の急として用いられた。

高麗曲を読んでいて唐楽と変えた事がある。それは小拍子間の音価の割り方を基本的に2分するということ。例えば「8分音符+16分音符の3連符」を「16分音符4つ」として速いテンポに対応していたのだが、ここまで読んだ数曲の高麗曲ではそこまでテンポを上げずに前者のように読んだ方が、音楽が生き生きする。
Jazz waltzやbebopの様にテンポによってswingの度合いが変わるように雅楽でもテンポによる変化があったのではないか?

楽家録に太鼓、三之皷、鉦鼓の譜があるので、今回は打楽器に集中した。

アニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる”かおなし”というキャラはこれを元にしているのではないか?

参考文献

  •   三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162

4 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:越殿楽 黄鐘調

 

現存していないが、南宮譜と新撰笛譜では平調に越殿楽が含まれている。

盤識調に小曲が少ないため、編曲したらしい。黄鐘調への編曲の経緯については分からない。


退出用音声として用いられた。急として演奏されたのでテンポは速い。現在の越殿楽のテンポはどの文献に基づくのだろうか?笛の古譜の旋律は過度に装飾、変奏されていない。よって譜のまま合奏してもわりと聞ける。


黄鐘調の越殿楽の動画もYoutubeにあった。これが急のテンポなのか?テンポ設定は何に基づいているのか?


参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 六調子譜 宮内庁書陵部 伏892
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録巻之十七、十八、十九

3 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:新河浦 高麗壱越調

 

読譜ミスを修正したバージョン。

顔除の急として演奏される。

懐中譜に笛譜があったが、テクニカルな箇所が多く、箏の素のメロディーを隠してしまう。

動画では初めに笛無しバージョン、次に笛ありとした。

太鼓は4拍子のパターンを用いている。曲の入りは高麗曲の加える法を用いた。

参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一
  • 懐中譜 国立公文書館内閣文庫 199-0162

2 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:高麗竜 破 急 高麗壱越調


日本の雅楽にかつてあった4種の獅子舞型の舞の一つ。琵琶の譜だけが残っている。

2020 11 04 国立公文書館内閣文庫の懐中譜に掲載されている。

天皇が五月の節句で競馬を見にいく時、御輿に乗って出かけるが、その御輿を先導したのが獅子舞型の舞の一つである蘇芳菲。その番舞となるのがこの高麗龍。高麗龍は天皇が御輿に乗り込む時(?)だったかに演奏された。

急は結構ご機嫌な曲想。2/4を唐拍子というのだが、中華っぽい。

三重県北勢地区の由緒正しい獅子舞、稲生流、山本流、箕田流、中戸流の曲も基本2/4拍子。中華の唐拍子の影響を受けているのだと思う。

この地域では神社守の像は狛犬と呼ぶ。見た目は獅子。社から見て左が獅子で右が狛犬、これが本来だが、現在は両方とも獅子になっている。狛犬には頭に一本角があった。

鈴鹿市の長太地区の獅子頭には頭に小さな突起が付いている。これは狛犬の名残りと思われる。しかし獅子頭自体は朱で塗られている。

獅子連中は自分たちの芸に高いプライドを持っているが、井の中の蛙なので実際の腕はたいしたこと無いし、自分たちの獅子の歴史とか研究しないのでよく分かっていない。

参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一
  • 懐中譜 国立公文書館内閣文庫 199-0162


1 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:犬 序 破(破 急) 高麗壱越調

龍笛の秘曲が獅子で、狛笛の秘曲が犬。笛の譜は残っていない用だが、箏と琵琶は残っている。箏に少しだけ笛の譜が書いてあるが、狛笛は指穴が6孔なのに第7孔を示す譜字が使われている。これは狛笛はかつては7孔だったことを示しているのではないか?
2020 11 05 懐中譜に笛譜が掲載されていた。第7孔を示す譜字については僕の勘違い。

紫宸殿の玉座の前に狛犬と獅子の像が飾られている。雅楽においても獅子と狛犬の曲がかつてはあった。狛犬は頭に1本角がある。獅子にはない。

天皇の神輿を先導する蘇芳菲は金色の頭に1本角で子供を2匹連れている。しかし信西古楽図にある唐の蘇芳菲は角がなく、全身毛むくじゃらで今の沖縄の獅子舞に似ている。

序 拍子13、12、11

破 拍子12

箏の譜に部分的に笛が書き込まれている。それと懐中譜の譜とは一致しない。

仁智要録と三五要録は対応して複数パターンを掲載している。序が3、破が2。これらには基政、政清と名がある。また破には明運譜拍子二十四とあり、明進譜では倍の拍子をとっていたらしい。


教訓抄p.106

狛犬、破、拍子十一又十二。急、拍子十四。一説これを序破と言う。相撲に用いる。打毬の時右方の勝負の楽とした。舞う者二人。口取り二人。舞い入る時松明を含め(?)ながら入る。楽に破急あり。乱声狛犬でて、乱声狛犬伏す。破を吹くとき松明舞い興す。急を吹く時、火を食う舞いに入った。

古譜によると乱声を吹き入場曲と為す。犬出て付せる時序を吹く。次に大真人出る。出て来たところ犬が大真人を追い噛む時乱声吹く。次破吹き始めるべし。今は序は破となり(?)、破は急である。

p.108

狛笛には「犬」「吉桿」といって、左右無き道の秘事である。


序は他の雅楽曲と比べて異質であり、一定の拍子を持っている。譜や教訓抄が記す通り、かつては破だったと思われる。懐中譜には破と急として掲載されており、其々仁智、三五の序と破と旋律線が似ている。

序の笛は序が破だった頃のものではなく、序として演奏されるようになってから付け加えられたと思われるものがある。破として演奏すると間に合わない装飾がある。

懐中譜にも1拍に9個の音を詰め込んだパッセージがあり、速いテンポでは演奏不可能と思われるので、テンポがゆっくり設定された時のものと思われる。

琵琶にも1拍に多く詰め込まれた箇所があり、その部分は序になってからのものと思われる。

琵琶の譜は8分音符+16分音符の3連符で構成するよう読んだ。唐楽の方では16分音符4つにしていたが、この曲でその読み方をすると曲の生き生きした感じが損なわれた。

破の冒頭の音符は小拍子がついていないので分音符とした。雅楽には珍しいアーフタクトで演奏が始まる。


パーカッションは楽家録より四拍子のものを採用した。獅子は笛と太鼓(+鉦鼓?)のみで演奏されたと思われる。獅子に対応していた狛犬も同様だっただろうか?ここでは通常の高麗楽として三皷を用いた。鉦鼓は伎楽の時には銅拍子だったと思われるので音源ではChinese Symbalを用いた。

参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波新書
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一