舞出し1
本曲の序奏部分は前曲と本曲を繋ぐ役割を持っており、間奏と呼ぶのが適当であろう。冒頭の
2小節は座付の序奏のモチーフが縮小されたものである。
2小節単位の繰り返しで構成され、この曲の間に獅子の舞人が交代する。太鼓は前曲の結句からのリズムパターンを維持する。
舞出から切れ目なく続く一連の曲は間奏部分によって
5つに分けられる。別れ扇、跳び扇(置き扇)、銜え扇はこの区分と合致していない。本曲に入って即興的な演奏がなされ、それによって主旋律が引き出されていく。録画によってリズムパターンや旋律の装飾に差があり、演奏者によって若干の個性が反映されている。
間奏の後、笛の即興風の旋律が始まると太鼓のリズムパターンが変わる。
2小節から成る。
15小節目から舞出しの主要テーマ
1が始まるが複数回に渡って旋律が途切れ、虫食い状態で演奏されていく。本来の旋律の長さがやや延ばされ、元の旋律が在ることを想定し難い。著者による校訂では、
15から
35小節目までを元の旋律の長さを保持しつつ、旋律が虫食い状態になるように変更を加えた。これによって本来の表現に戻ったと考えている。
67-71小節間は中音の
F#が出てくる。楠周辺の箕田流、稲生流の獅子舞では右手の中指で音孔を常に塞いでおく指使いを基本としており、フォークフィンガリングを用いないので実質
F#は演奏出来ず、聞くこともなかった。しかし楠のビデオでは時折使われる。
Youtubeにある中戸流の獅子舞の動画でも
F#を聞くことができる。
77小節目からは舞出しの主要テーマ
2が始まる。
95小節目から主要テーマ
1が虫食い無い完全な状態で再登場する。結句を経て次曲の序奏へ進む。
舞出し2
第
2曲も録画によるリズムパターンの差がある。勢いの落ち着いた間奏で始まる。この間奏は座附、こっこっこの序奏を感じさせる。舞出
1で用いられた主要テーマ
2が演奏され、舞出し
1の冒頭風の間奏(
51-54小節は舞出しの間奏部分を想起させる)が続く。次に主要テーマ
2が演奏される。その後冒頭の間奏に戻り、中間の間奏まで演奏した後、別途用意された
Codaに進む。
舞出し3
序奏は舞出
2と同じ。次に太鼓の
rollと笛による
Retitativo(オペラ等歌曲で明確なテンポが無く、語る様に歌われる部分)が続く。
50小節目からの
High
Cの連続に伝統的奏法が用いられていないのは謎である。
次に
C
melodic minor scaleによる短調旋律(
Ebを持つ)が出てくる。
117-121小節間には
Fが見られ、
C
Lydian
scaleの構成音
Eと
F#が
Ebと
Fに代わっている。転旋である。これは扇を取れなかった師子の落胆を表現している。これに続いて再び師子に扇に興味を持たせよう励ます口取の軽快な旋律が奏され、これが繰り返される。師子の落胆の旋律部分は旋律は
4/4拍子、太鼓は
2/4拍子に聞こえる。しかし後続の曲で使用される際には旋律も
2/4拍子に聞こえる。数ヶ所で用いられる落胆の旋律は明確に聞こえる箇所に揃えた。
こっこっこっで用いられた結句を経て次曲へ進む。
舞出し4
冒頭の間奏部分に
6小節付加される。これは
55-59小節目にも太鼓を伴わず現れるがそこでは
1小節短い。舞出し
3の冒頭の間奏が続き、
Recitativoが繰り返され、舞出し
3で現れた落胆と励ましの旋律が繰り返される。別途用意された
Codaへ至り、こっこっこっ、舞出し
3で用いられた結句が奏され、次曲へ進む。
舞出し5
序奏部分の旋律は舞出し
3と同じだが、太鼓は叩く拍数が増える。テンポが少し速い。
舞出し
1、
2で用いられた主要テーマ
2が
28小節目から、主要テーマ
1が
46小節目から再登場する。こっこっこっ、舞出し
3で用いられた結句を挟み、舞出し
3、
4で用いられた落胆と励ましの旋律が続く。
167小節目から新しい展開が見られる。
167-170の
4小節から成るフレーズが低音域で
2回繰り返され、続いてオクターブ上で奏され続いていく。口取が師子に噛みつかれる場面へ向かって盛り上がっていく。
212-216と
221-228のフレーズこの曲で初めて登場する。この後
Recitativoが再び演奏され、こっこっこっ、舞出し
3、本曲の中間で用いられた結句で非常にあっさりと終わる。
ここまでの一連の舞出し曲で用いられた主要テーマが全て登場し、扇をめぐる一連の演目がまとめられる。
舞出し
2と
4は其々の前曲で使われた主要テーマを構成を変えて繰り返すだけの曲であり、これといって独自性がない。