14 Sept 2021

雅楽の古譜を読む:調子 太食調

太食調(たいしきちょう)の調子。

調子とは曲を演奏する前にチューニング(調律)をするために演奏したり、

舞人が舞台に上がるまでの入場曲として演奏したり、

舞人が舞台から楽屋へ帰るまでの退場曲として演奏したりする。

Youtubeで動画を幾つかみたが、楽家録に書いてあるように演奏されている例が少ない。特に鞨鼓のリズムパターンが異なる。


この動画は調子がまとまって演奏されている。しかしながらどれも調律のための構成になっている。

調律のためには音取という極短い曲が用意されている。篳篥の譜には音取につづいて旋律がかかれているものが品玄調子として書かれていたりする。

楽家録によると調子は調律のためにも用いていたらしい。それ用に略式バージョンのやり方の説明が書かれている。音取はそれよりもさらに短い。


僕が古譜から作ったもの。各楽器は笙、篳篥、笛、鞨鼓、琵琶、箏の順で演奏される。これは楽家録に説明がある。

僕はその説明をある程度守っているが、守っていないところもある。鞨鼓は演奏を始めたら叩きっぱなしだし。笙の一句が終わってから篳篥が吹き出すということなのだが、それより前から始めたりしている。これはなるべく合って聞こえるように配慮するとそうなってしまう。

この調子という曲はそれぞれの楽器の譜の長さが異なる。つまりユニゾンで演奏されるわけではない。またそれぞれの楽器に多数の曲が用意されていたりする。つまり様々な組み合わせを試せる。

おそらく自由対位法という手法で一定のテンポの元に決まった調性の旋法で演奏するというルールで作られていると思われる。それ故、それぞれの楽器が演奏を始める箇所がずれていてもそれなりに聞こえてしまう。

曲には楽譜があるのでそういうわけにはいかない。曲と入場、退場などの使いまわされる小曲の違いを明確に出すには自由対位法を用いたのは効果的と思われる。これといって決まった旋律があるわけでなく、それぞれがそれぞれに演奏して偶発的なハーモニーを味わう。聴き方が曲とは異なるのだ。これはリフレッシュになる。

雅楽はかなり考えて作られていたらしい。


現代は感じ取りやすいテンポを明示するということを避けているように思う。僕の音源動画ではテンポを明示しているので、打楽器は曲の冒頭から入っている。