4 Sept 2021

雅楽の古譜を読む:音取

 ”ねとり”と読む。


楽曲の演奏前に音程を合わせるために演奏する。各管楽器の主席奏者のみが演奏する。

現代の雅楽の例がこちら。


これは平調の音取と思われる。横笛と篳篥合ってない。横笛が音程を合わせるのが難しいのは演奏技術が未熟なせいもあるが、現代用いられている龍笛はそもそも内径が太過ぎるので安定した演奏が難しいのではないか。高麗笛と神楽笛の間位の太さになるべきだと思うが。。。

今回古譜から読み出して作ったものがこちら。


楽家録には笙、篳篥、笛の順で演奏するとあるが、それぞれがソロとして演奏するとチューニングの意味が薄れるので、笙から演奏に入って笙が終わらないうちに、音を重ねるように篳篥が入り、そして龍笛が入るように組み合わせた。
鞨鼓のリズムパターンの説明があったので、それを付加した。

盤識調は他の調の音取に比べるとほとんどユニゾンで単純過ぎる。この方がチューニングは合うだろうが、おもしろくない。そこで笙と篳篥は合うように配置したが、龍笛は1拍遅らせた。

他にも演奏前には調子、上げ調子、乱声、品玄などある。これらが唐の宴楽にもあったのだろうか?


弦楽器を追加した。楽家録には笙、篳篥、笛、鞨鼓、琵琶、和琴、箏の順で演奏するとある。また揃って終わるようにする。

箏の爪調は長過ぎるし、琵琶の七撥は短すぎる。音価を倍、又は1/2しても上記の順番では終わりが揃わない。先に演奏を始めた楽器は終わりを延ばすことで調節するのだが、それでも結構延ばすことになる。

そこで当初考えた様に弦楽器においても末尾を揃えてみた。そうして演奏させたところなかなか良く響く。末尾は8分音符1拍程度の調節で済む。

楽家録によると音取はそもそも調子で行っていたらしい。その短いバージョンが今の音取ということか。調子には略式の短いバージョンの方法もあるが、それは音取よりはずっと長い。