14 Jun 2022

雅楽の古譜を読む:春鶯囀

 ”しゅんのうでん”

この曲は次の楽章から成る。

  1. 遊声(ようせい)
  2. 序(じょ)
  3. 颯踏(さっとう)
  4. 入破(じゅは)
  5. 鳥声(てっしょう)
  6. 急声(きっしょう)(入破に同じ)
琵琶の古譜は全楽章を通してD Lydianで書かれている。笙の古譜はD Mixolydianで書かれている。

曲の冒頭の遊声と序はD Lydianで演奏すると明るく自然に響く。颯踏以下はD Ionianで演奏すると自然に響く。
D Mixolydianではやや暗くなり、ウグイスが鳴いている明るい感じに影が差し込む。

つまり春鶯囀はD LydianとD Mixolydianの2つの旋法(音階)を用いて作られている。こういった複数の楽章を持ち、それぞれのベースとなる旋法が異なる例は少ないが他にもある。菩薩、長宝楽とか。

この曲が壱越調に分類されているのは後半に演奏される曲がD Ionianだからか。

Wikipedia: 春鶯囀 によると全曲の演奏に6時間かかるとあるが、これは古譜より4-12倍遅いテンポで演奏するという現代の手法、元の曲調よりも荘厳に聞かせて国の権威を高く見せるための洗脳、詐欺的手法によるからだろう。

古譜よる作った音源がこちら。


以前に作ったものはD Mixolydianにしていたのだが、壱越調に属する小曲を手直ししている時にD Ionianの旋法で自然に明るく響くことがわかった。他の調でもIonian modeが曲に適していることがあったので、壱越調でももしやと考えていたところ当たりだった。

現代の雅楽には壱越調の小曲は断絶してレパートリーにないので、壱越調がD MixolydianとD Ionianを含むということがわからないということか?否、古譜は現存しているのだから理論の構築にはそれらも読んで考慮すべきと思う。つまり科学的な考察以外になんらかの権力が働いて雅楽の理論は曲げられているように思われる。