9 Jun 2022

雅楽の古譜を読む:壱越調にはD IonianとD Mixolydianが含まれている。

 雅楽の楽曲はいくつかの調に分類されている。その内D(ドレミでいうとレ)から始まる調は2つある。

  • 壱越調
  • 沙陀調
沙陀調はD Lydian( D E F# G# A B C# )。長調と比較すると第4音が半音高い。この旋法(音階)によるメロディが自然に聞こえるので間違いないと思う。琵琶の古譜はこの音階で書かれている。

壱越調の琵琶の古譜もD Lydianで書かれている。しかし現在ではD Mixolydian( D E F# G A B C )であると考えられている。長調と比較すると第7音が半音低い。壱越調の曲をD Lydianで弾くとG#が変に響く。歌おうとしても音程が取り辛い。G#は譜面だけから演奏を習得しても完全な形にならないように仕掛けられたトラップではないだろうか?師匠から習わないと正しい音程がわからないようになっているのではないか。
雅楽教習がビジネスが成立するように仕組まれたのか?江戸時代以前は雅楽は一般市民が教習できなかった。楽譜においても楽譜だけから演奏を再現しても正しい形にならないようになっていたのではないだろうか。

迦陵頻という曲は壱越調に分類されている。序破急全楽章があり、破はC Naturalでないと中間部分と冒頭の旋律の対象がはっきりしないので、D Mixolydianの旋法からできていると思われる。


賀殿。この曲もD Mixolydianで良く響く。

壱越調の小曲は総じてD Ionianで書かれていると言える。現代の雅楽にはD Ionianで書かれている曲が断絶してしまっているので、壱越調をD Mixolydianのみとしてしまっている様子。古譜が残っているので全て調べて理論を打ち立てるべきと思うが、そこまで科学的でないのがこの分野なのか。

歌曲子という曲は壱越調に分類されている。この曲はC#で演奏しないと旋律が突然陰鬱になってしまう。なのでC#が正しいと思われる。つまりD Ionian、現在の長調と同じ音階(旋法)で作られていると考えられる。



以下D Ionianと仮定した場合に美しく響く壱越調の曲達。
D Ionianで作られている曲も中華曲なのだろうか?


胡飲酒は林邑楽。迦陵頻も林邑楽。前者はD Ionian、後者はD Mixolydianの旋法(音階)が合う。迦陵頻は日本で作曲された説があるらしい。