18 Oct 2020

雅楽の古譜を読む:渋河鳥 沙蛇調

 

拍子10 行道に用いられる。5回繰り返す。パーカッションは三度拍子。廃絶曲。

これは中華帝国隋の時に作られた曲らしい。

篳篥のパートが頭拍がスラーでつなげられて、裏拍から吹くことが多い。素早いパッセージも含まれる。現代の様にたらたら演奏していない。

龍笛も大神流は手が込んでいるが宮内庁書陵部にある六調子及高麗曲譜と酷似している。

これらの変奏を同時に演奏してもやはり聞きづらい音楽になるだけ。かといって註大家龍笛要録譜の通りに他のパートが演奏できるとも思えない。

新撰笛譜が残っていたら、より簡素は笛の旋律が得られたと思われる。今回は箏からテーマをとっている。
新撰楽譜の例から旋律を細切れにする方向でフレージングした。

行道に用いるので歩く速さとテンポをシンクロさせるべきだろうか?

雅楽のテンポを著しく遅くしたのは明治政府の要請で雅楽を荘厳に響かせ、国家の権威を大きく見せるというハッタリ策のせいなのだが、同様のことが江戸時代にも起こっていたら、さらに前の時代にも起こっていたかもしれない。
つまり、大寺院の供養行事で荘厳さを演出するためにテンポを落として演奏していたのではないかと。

しかしながら譜に残っている旋律達を見るとちょうど良いテンポで弾いたとき、過去の奏者がインストの音楽を楽しんでいる様子が感じられる。

今回の場合、三五要録に同曲として収録されていた譜は緻密だった。基本的に昔の雅楽はユニゾンで演奏された様子。其々の楽器のために其々に変奏されたものが譜に残っているが、それらは全て旋律に基づいている。

参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609