21 Nov 2021

催馬楽 桜人

桜人保存会

によると催馬楽の桜人という曲が名古屋市の指定無形文化財に登録されている。

名古屋市中村図書館に”桜人考”という本が所蔵されている。

  • 桜人考 魚山寺蔵版 羽塚堅子
この著者の羽塚さんが現行の桜人の譜を作った。そのいきさつと譜が書かれている。昭和五十年の著作。

昭和三十年(1955)頃、近隣に住む文学者の尾崎久弥さんが突然尋ねてきて、当時の市長小林さんが信州で発見した桜人という曲を演奏して欲しいと依頼があった。

信州で譜を所蔵していたのは平出久雄さん。この方に羽塚さんは手紙を書いて譜について問い合わせた。そうして演奏できるように譜を清書して市へ提供した。
昭和三十一年に無形文化財の指定を受け、年々補助金をもらって継承している。

文献によると高麗曲の地久の破に合うとのことで、この曲に桜人の歌詞を当てた楽譜が収録されている。明治撰定譜が用いられている。これは高麗双調。

次に著者の労作による双調の譜が掲載されている。この琵琶譜は三五要録の琵琶譜とは異なる。従って著者の労作は古譜とは異なるものと思われる。箏譜も掲載されており、それも仁智要録とは異なる。

この本では平出久雄さんの源家の桜人の譜を掲載している。そして藤家の譜は著者の手元にはないと言っている。三五要録には藤家の譜が掲載されているが、当時は三五要録を参照することができなかったのか?

先に述べた平出さん所蔵の源家の譜を写したものが掲載されている。この譜は歌詞に音程を示す漢字や音程の上下を示す線が書き足されたもの。多家の歌譜や神楽歌の譜に見られるスタイル。

明治撰定譜の地久の破はMIDIで再現されている音源がある。明治撰定譜というのは、明治時代に改めて撰定され、改変が加えられた譜。高度な奏法が排除されているため、古譜にある本来の音階ではない。


古譜を読んで再現した音源がこちら


桜人も古譜にある。古譜を読んで再現した音源がこちら




源家の譜は雅楽曲がそうであるように何倍もテンポを遅くして、荘厳に聞こえるように工夫されたもののように見える。古譜にはそこまで複雑な節回しは書かれていない。