7 Jul 2021

雅楽の古譜を読む:只拍子と楽拍子

 ”ただびょうし””がくびょうし”と読む。


明治よりも以前の雅楽の楽譜を読むと同じ曲に2つのバージョンがあったことがわかる。

只拍子と楽拍子。

これらについては論文が書かれている。

これらの論文で残念なところは古譜を音源化して楽拍子と只拍子の差異を聞いて確認できるようにされていないところ。僕の古譜を音源化し、一般公開するプロジェクトによってこの問題点は解決される。

只拍子は中華帝国の宴会用の燕楽が日本に輸入された当初の形を残しているものらしい。そして楽拍子は舞楽用に作られ用いられたものらしい。

宮内庁書陵部にある六調子譜という譜は龍笛、篳篥、笙のバージョンがある。これらは基本的に楽拍子のバージョンらしい。只拍子と楽拍子で曲の長さが異なる場合があって、只拍子の方にだけ合うと言う事例がある。

盤識調の鳥向楽という曲の只拍子の譜面には(仁智要録と三五要録)では2/4拍子が2箇所ある。しかし楽拍子の譜面にはこれがなく、初めから最後まで8拍子(4拍子)で書かれている。

これに対応する六調子譜(木管楽器)の譜面にはどれも2/4拍子の箇所はなく、箏、琵琶の楽拍子譜と合う。


只拍子の譜も探せばある。譜面の充実具合から楽拍子の方が充実していたらしい。例えば竜笛には竜笛延只拍子譜という只拍子だけを収録した譜がある。この譜の只拍子の旋律は新撰笛譜の旋律に装飾音や変奏が追加されている。

これまでよくわからなかったので、六調子譜でも只拍子譜と合うものは箏、琵琶とともに音源にしていたが、これは改める必要がある。

笛の只拍子譜と新撰笛譜を読んでみたところ、新撰笛譜の方がずっと簡素に書かれていたが、拍子の位置とか音価が正確に書かれていないので、箏譜の旋律と比較して音価を設定しなおす必要がある。

箏、琵琶の只拍子は一定の拍子に基づいて書かれている。これを旋律の末尾に自由にフェルマータを付けて演奏していたのだろうか?

只拍子と楽拍子を比較すると基本の音価が異なることに気づく。只拍子は4分音符、楽拍子は8分音符がベースで、楽拍子は只拍子の8ビート版といったところ。その8ビートにも独特の癖がある。

現代で4ビートの曲を8ビートで演奏してもテンポを倍落とすというわけではない。雅楽の場合舞楽は管弦時のテンポを半分に落として演奏するらしい。8ビートの只拍子ならそれは簡単だろう。また楽拍子はそのままのテンポで只拍子の旋律と合わせてもおもしろい。


管楽器の只拍子の変奏と比較すると楽拍子の変奏はずっと大胆に行われている。