20 Mar 2023

鯨船の採譜

 三重県北勢地区には鯨船(神道の神事)が点在している。10地区程あるとのこと。

その内の一つ勢州組の鯨船が廃棄から逃れ、四日市本町通り商店街へ拾われた。そこから音源を提供して頂いたので、それを採譜する試み。

西洋クラシックを学んだ音楽家にとっては地元の民謡、神事の歌、笛はとても音程が悪くて聞くに耐えない。よって日本の音楽の真価に気づくこともない。音程と拍子が正しければ聞けるので、音程と拍子のお手本となる音源をコンピューターで作り、それを真似るように練習するのが良いと思う。先代の歌が既に劣化している場合、それを真似ても改善はするのは難しいと思う。

流唄

  1. 前唄(ソロ ヴォカリーズ(歌詞が無い))
  2. 囃子(合唱)
  3. 本唄A(ソロ)
  4. 本唄B(合唱)
から構成される。10回繰り替えされ、前唄と本唄Aは旋律の装飾が異なる。これらはテクニカルなのでおもしろい。

役唄 流唄とは旋律や曲の構造が異なる。


初回は流唄と同じ構成。2回め以降は異なる。

  1. 本唄A(ソロ)
  2. 本唄B(合唱)
から構成される。

流し唄2 先の流唄と歌詞が異なる。構成は先の流し唄と同じ。


転調(転旋)が行われるのは曲に変化をつけるためと思われる。

何度も聞いて音程や音価を判定し、緻密に採譜する必要があることに気づいた。ある程度の量をこなして、演奏の音程の悪さや音価の不正確さを補正しないとその真価に気づけないところが問題と思う。曲のレベルに対して演奏が伴っていない(下手になってしまっている)のだろう。

労働歌が盛んだった時代には数をこなして上達していたので、音楽理論に精通していなくても上手になれたのだと思われる。そういう時代に育まれたものを鵜呑みにコピーして伝えており、それが劣化して来ているというところか。修復不可能になる前に分析して本来の形を取り戻しておくことが必要だろう。

西洋の音楽理論や記譜法はなかなか便利で、総譜を作ることが可能なので、曲全体を把握しやすい。またコンピューター上で音楽を作る際も便利である。日本の伝統音楽も物理現象であり、音階は物理的手法によって生み出されているのであるから西洋の記譜法で書くことは全く不可能ではない。微分音を駆使しているところは煩雑過ぎて話にならないが。

明治以降、数学においてはアラビア数字を用いて西洋で発展した数学を導入した。これと同じ様に西洋の磨き抜かれた音楽の記譜法と理論を導入すれば、地元の伝統音楽に科学的真価が見出され、明確に理解できるもの思う。

伊勢音頭


音源には太鼓が入っていないし、間の手と主旋律をわけて歌っていない。Youtube上に鯨船の動画が幾つか有り、伊勢音頭を歌っているのもあったので、それらを参考に補正と補填をするつもり。

Youtubeにいくつかある伊勢音頭とは旋律が異なる。芸者の伊勢音頭とは異なる様子。歌詞は一部同じ。


採譜はCDからRippingした音源をPC上で再生しながら、ブラウザの楽譜作成ソフトで記譜していく方法で行った。歌の音程を一々ソフトウェアで確認しながら書いていき、ある程度進んだところで調号の判定を行った。440Hzの音程に合わないところはその前の旋律から推定して音程を設定した。