11 Aug 2022

催馬楽 桜人2

 以前に書いた記事 催馬楽 桜人 雅楽の古譜を読む:桜人

名古屋市指定無形文化財である桜人。1956に指定を受けた。

元に成った楽譜は歌譜。平安時代に成立した仁智要録と三五要録には収録されていない源家の譜である。

その譜を音源化したのがこちら。客由など細かい装飾の記号は無視して、音程のみを拾って作った。G Mixolydianも試してみたが、おかしな響きで歌いにくかった。これの音価を2倍にすると仁智要録、三五要録と比較しやすい。フレーズ毎に見ていくと音程が似ているのがわかる。

この譜を元に羽塚堅子氏が、桜人の譜を作ったと考えられる。彼の著書「桜人考」に譜が掲載されている。

その譜は10/4拍子で書かれている。現行の雅楽は古譜の4-12倍遅く演奏されている。そこで音価を半分にして、源家の譜と同様の5/4とした。さらに適切なテンポを与えて音源化したものがこちら。G Ionian modeと思われる。


2022/08/14 読譜の誤りを修正した動画に置き換えた。

歌のパートは源家流の桜人を簡素にしているように見えるが、比較すると異なる点が多い。旋律のスケールはG Major pentatonic scaleで、源家流や仁智三五に見ることができるF#又はFが用いられていない。

全体にかなりご機嫌にできているのがよくわかる。これを何倍も遅いテンポで演奏して、この曲想を悟られないようにしているわけ。それが雅楽を荘厳に聞かせるための現代の手法。明治以降の政府によって要請が度々あったため、現在の雅楽のテンポが元の曲想を悟らせない位くなった。

次の動画は平安時代末期に成立した仁智要録と三五要録という古譜に書かれているものから作った。上記羽塚氏の労作とは違いがあり過ぎると思う。仁智、三五には曲によって藤家と源家の両方の譜を掲載している。それらを比較すると大きな違いはない。源家流の旋律と仁智三五から復元した旋律は似ている。

桜人の源家の譜は仁智、三五が書かれた年代よりも後になってから、朗詠の影響を受けて作られたのではないだろうか。


名古屋市の雅音会 桜人保存会で桜人が継承されているとのこと。この会で用いられている譜面は羽塚堅子氏によるものと思われる。念のために2002/08/12 10:04 AMにサイトの問い合わせから質問しておいた。同サイトから動画がへのリンクがあった。それが以下のもの。テンポが非常に遅いので、現行の雅楽のように古譜の4-12倍の遅さで演奏するという習慣を受け継いでいるものと思われる。Youtubeで再生速度を2倍にすると少しまし。こちらの動画のコメントでも質問しておいた。