30 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:胡蝶 破 急 高麗壱越調

 

E Ionianで演奏させるよう直したもの。急は笛と篳篥が1拍後にズレていることがわかったのでそれを修正した。

子供が蝶々の着ぐるみを着て舞う舞い。番舞は迦陵頻伽で鳥の着ぐるみを着て舞う。

破は最後の繰り返しのみパーカッション付き。急は繰り返し回数の指定がない。

迦陵頻伽はインド伝来と考えられるが、胡蝶は日本で作曲されたものらしい。子供相撲のために作られたとか。

急の笛は4拍子で書かれているが、箏と琵琶は2/4拍子で書かれている。

急の管楽器はテーマから離れ過ぎに聞こえる。

Youtubeで幾つも動画がヒットする。

これは熱田神宮の。7:38位からが本曲。それまでは乱声とか音取りとか。たるいのを吹く決まり。

教訓抄 日本思想体系の脚注には着ぐるみの図が書かれている。


高麗壱越調は箏では平調調弦(E dorian)で弾くと指示があるのだが、これでは琵琶と微妙に合わない。太食調弦(E mixolydian)で弾くと琵琶との合わなさはだいぶん解消される。

琵琶と箏の古譜は其々三五要録と仁智要録で同じ人物が監修したので、これらの譜による演奏はより合うハズと思う。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

29 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:崑崙八仙 高麗壱越調


教訓抄には 三五要略では鶴舞と呼ばれているとあるが、現存する三五要録では崑崙八仙になっている。

先に音源化した都志も鶴舞なので比較できる。


アイヌの踊りに鶴舞があったりする。そして楽器にも和琴がある。雅楽からの影響なのか?

右方楽には単純な旋律を繰り返して演奏するというものが多く見られる。このアイヌの鶴の舞の音楽も単純な短い旋律の繰り返しでできている。こういう構造のものがより古いのだろうか?


楽譜には小拍子が欠落しているとか、拍子が半拍ずれているとか、曲の末尾が足りないとか、問題があったこれらは箏の譜に合わせるように手を入れた。

Youtubeに宮内省楽部の昭和18年の演奏があった。葬式?という感じ。
春日大社で演じられたもので舞いがついているのがあった。

鶴というより小さな孔雀?けだる過ぎるテンポ。ナマケモノの舞い?

音楽を台無しにする遅すぎるテンポ、荘厳に聞かせて権威を示すという実を伴わないハッタリを国家規模でするの止めてほしい。やってはいけないことをやってると思う。

参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

28 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:石川楽


読譜ミスを修正したバージョン。


教訓抄によると 読みはセッセー。

この旋律が歌詞を伴って催馬楽というジャンルで歌われた。

歌詞はこちら ≪巻第十二の催馬楽・つづき≫

このサイトの解説によると高麗から渡来した人が女性の家へ通って一夜を過ごした後に帯を取り間違えて返ってしまった話しらしい。畿内に渡来人が多く住んでいたのは興味深い。石川は大阪府南部にある川なのか。

吉桿という曲には”力無き蛙、骨無きミミズ”の歌詞が付いていた。

石川の旋律についている歌詞は”石川”という語句が入っている。そして”高麗人”も歌い困れているので、右方楽に属する曲であることを踏まえて歌詞が付けられたらしい。

平安時代末期には雅楽の石川の舞いはかろうじて残っていたが、それを伝える者は他者の質問に誠実に答えなかったらしい。現在では廃絶曲になっている。

この曲は箏は弱拍から始まる。笛と琵琶は強迫から始まっている。

曲中で2拍目からフレーズが始まる箇所がある。

笛の譜には初回は低い音域で、2回目以降は高い音域でと指示がある。これは珍しい。

石川姓の宮司の家系がある。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一


雅楽の古譜を読む:都志与呂妓 高麗壱越調


読譜ミスを修正したバージョン。

 教訓抄によると鶴舞、八仙と呼ばれることもあるという。

崑崙八仙というい曲があるがそれと被るのではないか?

崑崙は妓楽の登場人物でもある。それはアフリカ系黒人奴隷を示すこともあった。

この曲想からは崑崙奴と関係があるようには思えない。


篳篥の譜を見つけられなかった。

平安時代末期には既に絶えていたらしい。仏教の法会のために用いられる曲だった。現在は廃絶曲。


リズムセクションは高麗の四拍子を採用。


右方楽はご機嫌な曲が多い様子。


参考文献

  • 註大家龍笛要録譜 宮内庁書陵部 鷹609
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 楽家録巻之十八、十九、二十一

19 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:蘇莫者 序 破 盤識調

箏の読譜の誤りを修正したバージョン。


新撰笛譜の旋律はシンプルで基本のメロディが分り易いが、六調子や大家龍笛要録譜は装飾が多すぎて話にならない。

これらの装飾過多の旋律が合奏されたとは考えにくい。

合奏には個人の奏者のためにソロパートが設けられていたのではないだろうか?Jazzのコンボみたいにソロを披露する機会があったのではないか?

 序の部分は古くは繰り返して演奏されたが、平安時代末期には繰り返し無しで演奏されたらしい。木管楽器の旋律が装飾過多なので、それらはオミットした。

破の方は木管楽器の装飾過多の旋律をソロパートとして演奏させている。

序は一定の拍子がないだけでテンポは遅くない。破は一定の拍子があるが、テンポは速くない。

この曲は復曲されていてYoutube上でも動画がある。

5:45からが当曲と思う。
雅楽は無駄に前置きが長い。

信西古楽図では蓑を着ていてこんなきれいな格好はしていないのだが。

譜によっては”蘇が莫者を作った”と書いてある。。

越殿楽なら”殿が作った”とか。。

聖徳太子が馬で出かけている時に馬上で尺八で蘇莫者を吹いたら山の神様が化け物の格好をして躍り出てきて舞った。その舞いをコピーしたのが宮中の蘇莫者の舞い。

日本の雅楽は中華帝国の宴会用の舞楽、流行歌なので、楽しんで見聞きできるハズなのだが。

聖徳太子自体が怪しい存在なので後付けのストーリーと思う。

日本は中華帝国に阿毎多利思比古が用明天皇と申告している。聖徳太子は用明の息子。

天照は九州王朝の歴代の王の一人だった。王年代記で中華帝国に渡った情報なのだが、これを保守も左翼も取り上げないのは何故?

参考文献

  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏587
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十七、十八、二十
  • 新撰笛譜 富山市立図書館 no.3828

15 Nov 2020

雅楽の古譜を読む:阿夜岐利 高麗壱越調

読譜ミスを修正した改訂版。



面:女形 白 牟子 一説鳥甲

教訓抄p.95によると幾つも呼び名があったらしい。

  • 愛嗜女(御神楽の歌あじめの作法と関係あるか?)
  • 大靺鞨
  • 阿夜岐理
  • 高麗女

舞人が6人で亀甲の形に並んで舞う。拍子18、10。拍子100まで舞う。どのように見ても女姿の舞いである。口伝では音取らずして直接吹く。初二拍子序吹く。拍子打たず。初拍子は次に太鼓を打つ箇所。

常説は心調子を吹き、この曲を吹く。常楽の様に。

この曲には”ソライリ”というものがある。ミナイリナムトスルヨウニテ、又ウチカエリテ舞う。打返舞時、拍子加える。口伝では空入は舞入りて、後頭が舞台の端際まで歩き寄って、我に立ち返って舞う。


曲の冒頭の2小節が序ということなのだろうか?琵琶に小拍子1つ分に多量の音符が詰め込まれている。


伏904の琵琶譜は拍子14となっているが、譜には12しかない。冒頭の2小節を繰り返すというのがしばしば見られるパターンであるが、それを示す譜字はない。

伏808の篳篥譜は冒頭に太鼓の百と小拍子が書かれていない。この部分が序であろうか。百を数えると13あるので冒頭に1つ加えると14。反付の位置は3小節目に返るということと思われる。冒頭の小節は”引”の譜字をフレーズの目安として音符を割り振った。最初の百の前の譜字は不明。


伏872、伏808と伏904は基本の旋律線は合っているように聞こえる。しかしながら笛と篳篥の変奏は大胆。伏904の琵琶から基本旋律を抜き出して見ると仁智要録伏865と似ている旋律で構成されていることがわかった。そこで拍子18の仁智要録から拍子14のバージョンを復元してみた。琵琶譜の冒頭の2小節は繰り返して、1回目は倍遅く演奏し序とした。


パーカッションは高麗の四拍子を採用。


おかめの面はこの阿夜岐利から発展したと思われる。ひょっとこは同じく右方楽の貴徳の鯉口から。能の女面も源流はこれ。能には翁の面もあり、それも源流は右方楽の採桑老と思われる。

獅子舞の口取り、天狗は伎楽の治道。雅楽の左方楽の散手。明治になるまでは雅楽は一般民衆には公開されなかったのだが、影響は受けていた様子。能管が竜笛の見ためにそっくりなのも興味深い。しかし能管は喉があって音程が不安定でまともに吹けない。これは雅楽の楽器を民衆の手に渡さない工夫だったのか?

武士の間で能が流行ったのは雅楽を流出させてはいけなかったからか?

”どのように見ても女姿の舞いである。”そして鳥甲。女が鳥甲被るだろうか?また”どのようにみても”とわざわざ言う意味があるのか?この舞いは女に男装させて舞う舞いではないのか?白拍子に繋がるのか?


参考文献

  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
  • 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
  • 高麗曲並六調子曲譜 宮内庁書陵部 伏904
  • 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
  • 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一

12 Nov 2020

作物(造物) 高麗壱越調


読譜ミスを修正した改訂版。



教訓抄には 作物は高麗壱越調、双調、平調にあるらしい。それぞれ作曲者が異なる。

高麗壱越調のこの曲は百済真雄(貞雄)によるもの。姓が百済で曲が右方楽に属するところがおもしろい。


リズムセクションには高麗四拍子を採用した。

三五要録によると「散手」が作物を用いる時「貴徳」はこの曲を急として用いるとある。

教訓抄によると「貴徳」が急を隠す時、この曲を用いるとある。


参考文献

  • 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
  • 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
  • 懐中譜 国立公文書館 内閣文庫 199-0162
  • 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
  • 楽家録 巻之十八、十九、二十一