面:女形 白 牟子 一説鳥甲
教訓抄p.95によると幾つも呼び名があったらしい。
- 愛嗜女(御神楽の歌あじめの作法と関係あるか?)
- 大靺鞨
- 阿夜岐理
- 高麗女
舞人が6人で亀甲の形に並んで舞う。拍子18、10。拍子100まで舞う。どのように見ても女姿の舞いである。口伝では音取らずして直接吹く。初二拍子序吹く。拍子打たず。初拍子は次に太鼓を打つ箇所。
常説は心調子を吹き、この曲を吹く。常楽の様に。
この曲には”ソライリ”というものがある。ミナイリナムトスルヨウニテ、又ウチカエリテ舞う。打返舞時、拍子加える。口伝では空入は舞入りて、後頭が舞台の端際まで歩き寄って、我に立ち返って舞う。
曲の冒頭の2小節が序ということなのだろうか?琵琶に小拍子1つ分に多量の音符が詰め込まれている。
伏904の琵琶譜は拍子14となっているが、譜には12しかない。冒頭の2小節を繰り返すというのがしばしば見られるパターンであるが、それを示す譜字はない。
伏808の篳篥譜は冒頭に太鼓の百と小拍子が書かれていない。この部分が序であろうか。百を数えると13あるので冒頭に1つ加えると14。反付の位置は3小節目に返るということと思われる。冒頭の小節は”引”の譜字をフレーズの目安として音符を割り振った。最初の百の前の譜字は不明。
伏872、伏808と伏904は基本の旋律線は合っているように聞こえる。しかしながら笛と篳篥の変奏は大胆。伏904の琵琶から基本旋律を抜き出して見ると仁智要録伏865と似ている旋律で構成されていることがわかった。そこで拍子18の仁智要録から拍子14のバージョンを復元してみた。琵琶譜の冒頭の2小節は繰り返して、1回目は倍遅く演奏し序とした。
パーカッションは高麗の四拍子を採用。
おかめの面はこの阿夜岐利から発展したと思われる。ひょっとこは同じく右方楽の貴徳の鯉口から。能の女面も源流はこれ。能には翁の面もあり、それも源流は右方楽の採桑老と思われる。
獅子舞の口取り、天狗は伎楽の治道。雅楽の左方楽の散手。明治になるまでは雅楽は一般民衆には公開されなかったのだが、影響は受けていた様子。能管が竜笛の見ためにそっくりなのも興味深い。しかし能管は喉があって音程が不安定でまともに吹けない。これは雅楽の楽器を民衆の手に渡さない工夫だったのか?
武士の間で能が流行ったのは雅楽を流出させてはいけなかったからか?
”どのように見ても女姿の舞いである。”そして鳥甲。女が鳥甲被るだろうか?また”どのようにみても”とわざわざ言う意味があるのか?この舞いは女に男装させて舞う舞いではないのか?白拍子に繋がるのか?
参考文献
- 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
- 仁智要録 宮内庁書陵部 伏865
- 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
- 高麗曲並六調子曲譜 宮内庁書陵部 伏904
- 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
- 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
- 楽家録 巻之十八、十九、二十一