\拍子16
教訓抄より現代語訳して引用
p.117
相撲の節にこの曲をアララムギ(阿良々木)ということがある。近来舞いが絶えた。テンポが速い。
16拍子の時4鞨鼓が1拍子を加える。8拍子の時は早8鞨鼓、三度拍子を加える。
脚注によると紅の袴に薄衣という女房姿でイチメ笠を着て舞う。侍女一人付く。懐にろくろ(?)を構えて竹(丈?)を高くして清涼殿に尻をかける。
アニメの物語シリーズの主役 阿良々木くんの姓と関係あるのかと興味を抱いて読んでみた。が詠が日本語。中華曲ではないのか?イチイの木と関係あるのか?家紋に”五つイチメ笠”がある。市女笠は女性の外出用の笠。
速いテンポの曲で女性が舞うというのが興味深い。女性の舞いは優雅な舞いだけではなかったということか?袴の裾の高さ(?)が登場時にとても短く、舞台に上がるにつれ長くなるらしい。そして門や御殿に尻をかけて(腰かけて?)舞う。袴の裾を上げて素足を見せる舞いだったか?
天之受女のストリップが神話にある位なので、現在の感覚から見れば下品な舞いが宮廷で行われていても不思議ではない。宴の席で男二人に下半身を露出させたまま踊らせ、それを見て笑って楽しんだとかもある。性をおおらかに楽しんでいたのが日本人の文化なのだが、昨今はお行儀が良過ぎて去勢されているように見える。
仁智要録にはA#が出てくる。これはEを主音とする音階の第4音が半音上がっている。又D#も出てくる。これは第7音が半音上がっている。このためこの曲はE Lydianで作られているように聞こえる。
Dを主音とする壱越調の枝調子に沙蛇調D Lydianがあるように、Eを主音とする音階にもE Lydianがあったのではないか?
遠藤徹の雅楽の分析では太食調はE Mixolydianとされている。乞食調は元はEを主音とする調ではなく移調されたものらしい。
龍笛譜を3点読んで比較したところ鷹609が最も読みにくい。譜のタイトルが同じ註大家竜笛要略譜でも収録されている譜は微妙に異なる。
これまで同様古譜を全て同時に演奏しても微妙にズレていて聴き応えがある音楽に到達していない。やはり各楽器の独奏が行われる構成であったように思われる。
三五要録には西譜と書かれた譜が掲載されているが、太鼓の拍子が書かれていない。この譜はこの曲の只拍子の譜とほぼ同じである。
楽家録17巻p.590に鞨鼓について書かれている。早四拍子としてリズムパターンを加えた。しかし正と来の違いが分からない。Youtubeには小泉文夫の解説動画があるが、来は速いテンポでは使えない。おそらくリムショットではないかと思う。
参考文献
- 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
- 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
- 六調子譜 宮内庁書陵部 伏848
- 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
- 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
- 註大家竜笛要略譜 宮内庁書陵部 伏893
- 註大家竜笛要略譜 宮内庁書陵部 鷹609
- 教訓抄 日本思想体系 岩波書店
- 楽家録 巻17