拍子15
仁智要録によると破は廃絶曲らしい。褌脱だけが残っているということか。仁智要録では最後の小節は1拍、六調子曲譜では2拍ある。これは後者が繰り返しの際に演奏される音を含んでいるから。後者には左手による装飾が書かれていない。
三五要録伏931の太鼓の拍子の百等鷹587で修正した。盤識調弦で読むと乙クがD#Eとなりオクターブで合わない。黄鐘風香調調弦ではこれが合うので、この調弦で読んだ。
三五懐中元本 伏848は盤識調弦で読んだ。
三五懐中元本 伏848と三五要録 鷹587の譜は異なる調の同じ曲に聞こえる。音型は同じ。より仁智要録に合うのは前者だが、幾つかのAをG#に修正した。後者はG#以外の音を長1度上げると仁智に合うし、これらによって三五懐中元本と三五要録の譜は同一曲になる。
懐中譜と六調子及高麗曲譜伏808はよく似ている。装飾は後者の方が多い。どちらもAをG#にすると仁智要録と合う。
仁智要録のG#をAにすべきか?篳篥は音程を下げる方が簡易に思われる。そうであればAの運指でG#を演奏していたのではないか?
六調子並高麗曲譜 伏872は1拍子多い。最後のあたりを1小節分カットしても合う。今回は伏872をベースに註大家龍笛要略譜 伏894との旋律の共通箇所を追い、最後の4小節を継げて拍子15とした。
笛にはG#が入っていない。箏の調弦にはG#があってAはない。盤識調のペンタトニックに沿うようにAをG#に置き換えるべきではないか?
註大家龍笛要略譜はわずかなテンポのズレも書き込まれているように見える。そのためある程度の速さで演奏した時に簡素な旋律を見出すことができる。
教訓抄p.155によると唐拍子で打つとある。唐拍子は譜で百と表されている箇所に相応する。鞨鼓は用いない。しかし3度拍子を加えた。
この曲は猿楽、曲芸、雑技等の芸が披露される時のBGMだったらしい。御霊会の行進では道程で僧が短刀をジャグリングするという芸が魔除けとしてなされていたらしい。”剣気”という名称はここから来ているのではないか?
構成
- テーマ(仁智要録の旋律をユニゾン)
- オーボエ(懐中譜)
- オーボエ(六調子並高麗曲譜)
- フルート(六調子及高麗曲譜)
- 琵琶(三五要録)
- 琵琶(三五懐中元本)
- Mixed all parts
- テーマ(仁智要録の旋律をユニゾン)
参考文献
- 仁智要録 宮内庁書陵部 鷹593
- 六調子曲譜 宮内庁書陵部 伏807
- 三五要録 宮内庁書陵部 伏931
- 三五要録 宮内庁書陵部 鷹587
- 三五懐中元本 宮内庁書陵部 伏848
- 六調子及高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏808
- 懐中譜 東京国立博物館 QA-1368
- 六調子並高麗曲譜 宮内庁書陵部 伏872
- 註大家龍笛要略譜 宮内庁書陵部 伏894
- 教訓抄 日本思想体系 岩波書店