”えてんらく”
鎌倉時代成立の音楽書:教訓抄には”安城楽”を移調して平調の越殿楽としたとある。現存する安城楽の譜には急(現代演奏される越殿楽)がない。
まずこれが安城楽。
平調の越殿楽の古譜には笙のための譜がある。それには破も書かれている。それら古譜と盤識調の古譜から作ったのが次の音源。急のテンポは現代の越殿楽の演奏とは全く異なるが12回位聞けそうなものだろう。
現代一般に演奏されているのは平調越殿楽の急なのだが、先に挙げた教訓抄では12、13回繰り替えして演奏すると書かれている。とても現代のテンポでは聞いて居られない繰り返し回数と思う。
現代の日本の雅楽は戦国時代に断絶した宮中の雅楽を江戸時代の始め頃に復興して儀式用途に用いたものを引き継いでいると思われれる。江戸時代の老中:松平定信は著書:俗楽問答で当時のテンポのはっきりしない演奏や箏の左手の技法を省略した演奏を批判している。
この雅楽は明治以降に荘厳に聞こえるようにより遅いテンポで演奏しろという政府の要請を受けて現代の超スローな演奏になったと思われる。
70年代に英国の音楽学者ピッケン博士によって日本の雅楽は古譜の4-12倍遅く演奏されていると指摘されたのだが、日本の雅楽はそれを無視するが如く、全く古譜を省みることもせず退屈な演奏を続けている。
日本に残存する雅楽の古譜は主に中華帝国の宴会用の舞楽が中心になっている。宴会用の舞楽を荘厳さをともなう儀式に用いるというのだから無理があるのだが、それをやってしまっているのが日本の皇室や神道、仏教の儀式や神事、供養だったりする。